30年前、アメリカの企業が陥っていた「合理主義」

古い本が復刊していた。
「エクセレント・カンパニー」トム・ピーターズ&ロバート・ウォーターマン著 大前研一 である。
大前研一が訳者をやっている本とはどれほどのものか?と思い、最初は購入したが、とんでもなく興味深い本であった。
これは、30年ほど前のアメリカの企業を分析したものであり、本の端々に「アメリカ企業は日本企業のようになれないのは何故か?」という文言がある。
今では全く逆になっているが、それでも、とてもとても示唆に富んでいる。
30年前のアメリカ企業が陥っていた「合理主義」とは何か?
それは、「合理主義至上主義」と呼べるようなものだったらしい。
抜粋して良いのかわからないが、非常に素晴らしいまとめがあったので抜粋する。
かなり長いので注意して欲しい。約2ページ分だ。


●大きな事は良いことだ――常に「規模の経済」を享受できるからである。いくつかのものがバラバラにあったら、迷わずにまとめてしまえ。重複・二度手間・無駄等を避けよ。また、体系が大きくなるにつれて、各々の構成要素が相互に注意深く、また正規の手続きを踏んできちんと整理されているよう、心がけなければならない。
●確実に成功するためには、生産コストを低く抑えるしかない。顧客の真の利益をとことん考えれば、行きつくところはコストである。生き残った会社は、例外なくほかより安くやっている。
●あらゆることを分析せよ。市場調査を丹念にやり、キャッシュ・フロー(DCF)を分析し、適正な予算を立てていれば判断を誤ることはない。少しの分析でも役に立つのだから、たくさんやるにこしたことはない。(以下略)
●平穏を破る者たち――つまりクレイジーなチャンピオン――を組織から排除せよ。とにかくプランはあるのだ。突破口を開くためには、新製品開発の正式な計画が1つあれば良い。(以下略)
●経営者の仕事とは意思決定をすることだ。適切な指示を与え、じゃんじゃん困難に立ち向かえ。ポートフォリオのバランスに注意しろ。魅力的な業種があれば、買収してでも進出せよ。実行・実践は二の次だ。実践段階でうまくいかなければ、いう事を聞く管理者に総入れ替えすればよい。
●あらゆることを管理下におけ。経営者の仕事は物事をきちんと管理することだ。組織機構を細部にわたって規定し、職務分掌をなるべく詳しく書け。あらゆる偶発的な出来事に対応できるよう複雑なマトリックス組織を作り上げよ。決断は白か黒かはっきり行え。従業員を生産体型の機械的一部と考えよ。
●適切な報酬精度を設定すれば、生産性は自然に上がる。仕事を正確にそつなくこなすことに対して、直接金銭的に十分報いれば、生産性の問題は解消する。特に成績の良いものには、これ見よがしに報酬を与え、仕事をしたがらない30〜40%の雑草みたいなやつは摘み取れ。
●品質管理には監督を強化せよ。品質についてもほかの業務と同じく、命令してやらせるのだ。それでもダメなら、品質管理部門を三倍に増員せよ。品質管理部長は、直接社長に報告せよ。やつらにこちらが本気であることをよくわからせるのだ。
●ビジネスは、あくまでビジネスである。財務諸表を読むことが出来れば、あらゆることは管理できる。従業員も製品もサービスも、収益を上げるための手段であり、利用すべき資源に過ぎないのだ。
●トップ経営者たるものは、市場よりも頭が良くなければならない。誰が見ても上手くいっている様に見せるために、損益計算書貸借対照表の化粧を怠らないことがコツである。なかんずく、四半世紀ごとの収益の伸びが止まった様に見せてはならない。
●成長が止まったら全ておしまいだ。自分の業績でもうこれ以上のことを望めないなら、よくわからない業種の会社でも買収しろ。こうすれば少なくとも成長だけは続けることが出来る。
(P93〜P95 抜粋)


1つでも、「当たり前だ」「その通りだ」「納得できる」と思ったら、この本を読むべきである。


エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)

エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)